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Medical Treatment診療案内
潰瘍性大腸炎診療
腸に炎症を来す疾患を「炎症性腸疾患」と言い、「潰瘍性大腸炎」や「クローン病」があります。厚生労働省の難治性疾患克服研究事業の特定疾患に指定されている、一般的に「難病」と言われるています。適切な治療をして症状を抑えることができれば、健康な人とほとんど変わらない日常生活を続けることが可能です。
•もともとは欧米で多い疾患と言われていましたが、食生活が欧米化する昨今、日本でも急激に患者数が増えています。日本では、約22万人の潰瘍性大腸炎の患者さんがおり、右肩上がりで患者数が増えております。
•発症は若年から高齢者まで発症しますが、男性は20歳前半で、女性は20歳後半が発症ピークです。全体の9割が軽症から中等症です。
原因
潰瘍性大腸炎の原因ははっきりわかっていませんが、大腸粘膜を白血球が攻撃するなど、自己免疫疾患が関与しているのではないかといわれています。そのほか、遺伝的要因、食生活、腸内細菌叢の変化などの関与も指摘されています。
症状
軽症例では血便を伴わないが、重症化すれば、水様性下痢と出血が混じり、滲出液と粘液に血液が混じった状態となることもあります。他の症状としては腹痛、発熱、食欲不振、体重減少、下痢、腹部不快、頻便、体重減少、貧血があります。その他にも、腹部膨満、食欲低下、残便感や便切迫感などもあり症状は多彩です。
炎症の範囲で大きく3つのタイプ分けがされており、「全結腸炎型」「左側大腸炎型」「直腸炎型」があります。
診断
【診断の基準】
A)臨床症状
持続性または反復性の粘血・血便、あるいはその症状が現在も続いている、過去に現れたことがあることを確認します。
B)①内視鏡検査
ⅰ)粘膜はびまん性におかされ、血管透見像は消失し、粗ぞうまたは細顆粒状を呈します。さらに、もろくて易出血性(接触出血)を伴い、粘血膿性の分泌物が付着しています。
ⅱ)多発性のびらん、潰瘍あるいは偽ポリポーシスを認めます。
ⅲ)原則として病変は直腸から連続して認めます。
②注腸X線検査※現在は上記の内視鏡検査での診断するケースが多いです。
ⅰ)粗ぞうまたは細顆粒状の粘膜表面のびまん性変化
ⅱ)多発性のびらん、潰瘍
ⅲ)偽ポリポーシスを認め、その他、ハウストラの消失(鉛管像)や腸管の狭小・短縮が認めます。
C)生検組織学的検査※基本は内視鏡検査下での組織採取にて行います。
活動期では粘膜全層にびまん性炎症性細胞浸潤、陰窩膿瘍、高度な杯細胞減少が認められる。いずれも非特異的所見であるので、
総合的に判断する。寛解期では腺の配列異常(蛇行・分岐)、萎縮が残存。上記変化は通常直腸から連続性に口側にみられます。
その他感染性腸炎などを鑑別するために便培養検査なども行います。このよに、潰瘍性大腸炎の診断には各種検査が欠かせません。
検査には心理的・身体的負担をともなうものもありますが、正しい診断と適切な治療のために、必要な検査を受けましょう。
治療
重症度に応じて対応が必要です。軽症から中等症はまず外来で内服治療を行っていきます。
症状を我慢して重度の貧血を来していたり、劇症タイプの場合は入院での治療が必要となるケースもあります。
潰瘍性大腸炎の多くは寛解(症状が落ち着いている状態)と再燃(症状が悪化している状態)を繰り返します。
未だ、完治させる治療法が見つかっていないため、適切な治療を継続することで再燃をコントロールし、寛解を維持することが重要です。
また、現在は症状のみだけで目標にするのではなく、「粘膜治療」を目標とする治療が重要とされています。「粘膜治癒」とは内視鏡観察時の大腸粘膜の病変が治まった状態のことを言い、「粘膜治癒」は「内視鏡的寛解」とも呼ばれます。粘膜治癒していることで、再燃しにくくなったり、再燃時の重症化しにくいことも分かってきています。また、粘膜治癒は、発がんのリスクも軽減すると考えられています。
粘膜治癒の判断には内視鏡が不可欠ですが、毎回内視鏡検査を実査には困難なので、便中カルプロテクチンやロイシンリッチα2グリコプロテイン(LRG)などのバイオマーカーを活用します。
便中カルプロテクチン
炎症性腸疾患(潰瘍背大腸炎およびクローン病)と診断された患者さんで、3か月に1度の頻度で医療保険で検査ができます。採取して便を提出するのみなので、内視鏡より簡便で費用も抑えられます。臨床床性能試験において内視鏡的重症度との相関性が認められており、粘膜治癒を判定できる可能性が報告されています。 便中カルプロテクチンについて
ロイシンリッチ α2グリコプロテイン(LRG)
同じく炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)の活動期の判定を補助する新しい分子マーカーです。潰瘍性大腸炎において、臨床指標(CAI:ClinicalActivityIndex)、CRP及びLRGの組み合わせは、活動期の判定補助に有用です。血液検査で測定でき、炎症性腸疾患の患者さんのみに、3か月に1度の頻度で保険適応となりました。 LRGについて
治療により症状が軽快しても自己判断で治療をやめるのではなく、医師の指示のもと毎日の服薬を欠かさないことが大切です。
【薬物治療】★当院で行える治療
★5ASA(アミノサリチル酸)経口剤・局所製剤
★経口抗α4インテグリン製剤
★ステロイド/ブデソニド経口・フォーム製剤
★免疫調整剤(アザチオプリン)/免疫抑制剤(タクロリムス)
★生物学的製剤
★JAK阻害薬
【その他】
・血球成分除去療法
・手術
厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業
「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」
潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針
http://www.ibdjapan.org/pdf/doc15.pdf
治療薬について
・経口抗α4インテグリン製剤(カログラ®)
1回8錠1日3回 1日24錠
最長6か月まで 再開までの休薬期間は8週
・プレドニゾロン(プレドニン®)
経口1日30㎎~40㎎ 3か月をめどに中止
・ブデソニド(コレチメント®)
1日1回1錠
8週を目安に必要性を検討
・生物学的製剤
抗TNFα抗体(インフリキシマブ・アダリマブ・ゴリムマブ)
抗α₄β₇インテグリン抗体(べドリマブ)
抗IL12/23抗体(ウステキヌバブ)
抗IL23抗体(ミリキズマブ)
・JAK阻害剤
フィルゴチニブ
トファチニブ
ウパダシチニブ
・生物学的製剤
インフリキシマブ(レミケード®)
アダリマブ(ヒュミラ®)
ゴリムマブ(シンポニー®)
べドリマブ(エンタイビオ®)
ウステキヌバブ(ステラーラ®)
ミリキズマブ(オンボー®)
・JAK阻害剤
フィルゴチニブ(ジセレア®)
トファチニブ(ゼルヤンツ®)
ウパダシチニブ(リンヴォック®)